COLUMN 採用お役立ちコラム

2021.11.18

採用市況感レポート2021年9月(厚生労働省調査データから)

皆さんこんにちは。株式会社天職市場アナリストチームです。
2021年9月分の一般職業紹介状況が2021年10月29日に、毎月勤労統計調査(速報)が2021年11月9日に公表されました。こちらに基づいて2021年9月分の採用市況感レポートをお届けします。

有効求人倍率、新規求人数及び新規求職申込件数の動き(2021年10月29日データ)

有効求人倍率(季節調整値)

(厚生労働省 一般職業紹介状況(職業安定業務統計)より)

9月の有効求人倍率(季節調整値)は1.16倍となり、前月に比べて0.02ポイントの増加となりました。これまで求人市場に影響を与えていた緊急事態宣言ですが、新型コロナウィルスの陽性者数が大幅に減少し、9月いっぱいでの宣言解除が見込まれたことが、微増ではありますがプラスに転じた要因と考えられます。特に全面解除が決定した下半期あたりから企業の採用活動が目立つようになったことから、10月以降の有効求人倍率は、大きく上昇するとの見方が強まっています。

新規有効求人数推移(季節調整値)

(厚生労働省 一般職業紹介状況(職業安定業務統計)より)

新規求人数推移(季節調整値)は2.10倍(+13,773件)となり、増加に転じた前月に引き続き0.13ポイント上回りました。産業別に見ると、以前から海外向け製造需要が高まっていた製造業が32.4%増と相変わらず大幅な伸びを見せており、全体の数字を引き上げている結果となっています。次いでサービス業(他に分類されないもの)14.3%増、情報通信業が9.0%増となっています。逆にこれまで増加傾向にあった宿泊業や飲食サービス業が7.5%減となっていますが、市場全体に大きな影響はありませんでした。

新規求職申込件数推移(季節調整値)

(厚生労働省 一般職業紹介状況(職業安定業務統計)より)

新しい仕事を探し始めようとハローワークに求職登録をした、求職者の数を示しているのが新規求職申込件数推移(季節調整値)です。9月は対前月比-19,335件となり、2021年5月以来の大幅な減少となりました。昨年の同時期も数字を落としていることから、例年通りの動きとも考えられますが、新規求人数が連続して増加していることを鑑みると、企業にとって採用が難しくなる状況になりつつあることは間違いなさそうです。

皆さんもご承知の通り、9月30日をもって緊急事態宣言が全面解除となりました。すでに解除を見越して求人活動を再開した企業も増えていますが、10月以降の有効求人倍率がかなりの割合で伸びていくことが考えられます。9月は求職者数が減少したことによって採用しにくい市場環境となりましたが、さらに需要と供給の差が拡大していくことによって、コロナ禍以前のような採用難の局面に戻っていくことになるでしょう。

■毎月勤労統計調査速報2021年9月(2021年11月9日データ)

常用雇用及び労働異動率

(厚生労働省 毎月勤労統計調査より)

労働異動率を見ると、「建設業」「教育、学習支援業」「医療、福祉」が引き続き伸びを見せています。また、「飲食サービス業等」や「卸売業、小売業」が回復傾向にあり、入職率を見ても採用が戻り始めている状況にあります。逆に「生活関連サービス」「複合サービス」の低下傾向が続いていますが、これは旅行関連業やパチンコ店、カラオケ店、フィットネスクラブやエステサロン、映画館などの業種が含まれていることから、コロナ禍の影響を大きく受けていると考えられます。
毎月勤労統計速報の概況によりますと、現金給与総額は270,019円と前月比0.2%増となりました。そのうち一般労働者が348,845円(0.8%増)、パートタイム労働者の比率は31.23%(0.17ポイント増)。一般労働者の所定内給与を見ると315,041円(0.5%増)、パートタイム労働者の時間当たり給与は1,229円(1.8%増)となりました。共通事業所による現金給与総額ではパートタイム労働者が0.9%減となった以外は、軒並み増加傾向にあります。また、就業形態計の所定労働時間が9.4時間と3.4%増となっており、残業時間が伸びていることから経済そのものも回復傾向にあるのではないかと考えられます。10月1日から最低賃金が過去最大幅の引き上げが行われることもあり、給与水準は今後もさらに上がっていくでしょう。

■トピックス

厚生労働省が定期的に事業所と個人に対して行っているアンケート調査、「令和2年転職者実態調査」の結果が公表されました。ここで表される数値は、そのまま企業の採用動向や転職者の実態を表しているので、今後の採用活動の参考にしていただきたいと思います。

【参考資料】

https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/6-18c-r02.html

それぞれの調査結果の概要については、以下の通りとなりました。

◎事業所調査

・転職者を採用し、在籍している事業所は33.0%
・「経験を生かし、即戦力になる」「専門知識・能力がある」が転職者の採用理由
・今後3年間で、転職者採用の予定があると答えたのは53.3%と半数以上が検討中だった

◎個人調査

・前職を辞めた理由は「自己都合」が76.6%とトップ
・自己都合のうち、主に目立った理由として
 「労働条件が良くない」「満足のいく仕事内容ではない」「賃金が低い」が上がった
・現在の勤務先を選んだ理由として目立ったのは、
 「仕事の内容、職種に満足」「自分の技能能力が生かせる」「労働条件が良い」だった
・転職の満足度は42.0%と、おおむね満足していることが見受けられる

上記を見ると退職理由と入社動機が非対象のようにも見えますが、「労働条件が悪い」「仕事内容に不満」を理由に挙げていることは、そのまま「賃金にも不満」を抱えている人が多いことを示しています。また、「仕事内容で選ぶ」「労働条件も重要」という入社動機から考えるに、就労状況における不満を解消することが転職希望者の入社動機を促す要因になります。採用活動においてはいかに仕事内容のマッチ度を高めるか、そして労働条件の不満がどこにあるのかを確認する必要があるでしょう。

最後に、景気および雇用動向に関するニュースを2点ご紹介します。

「時短」解除で飲食店“人材争奪戦”Yahoo!ニュース
https://news.yahoo.co.jp/articles/0e1bbfb2729748b7fc42425fa7164bfab7ca754a

時短営業の要請解除に伴い、飲食や宿泊業の求人数が増加。毎月勤労統計でも飲食サービス業の入職率が伸びていることから、早くも人材確保に各事業者がしのぎを削っている状況にあります。すでに人手不足に陥っているところもあり、他の業種との間で人材の取り合いも起こるなど採用に苦戦している様子が伺えます。

台湾TSMC、熊本に半導体工場 8000億円、ソニーGと共同出資
https://www.jiji.com/jc/article?k=2021110901094&g=int

半導体受託製造で世界大手の台湾積体電路製造(TSMC)が、熊本に初めての半導体製造工場を建設との発表が行われました。当初投資額の約70億米ドル(約8000億円)のうち、約5億ドルをソニーグループが出資。また、日本政府も経済安全保障政策の一環として、補助金を支給する予定です。2024年末までの生産開始を目指しており、これにより1500名ほどの雇用が見込まれています。これを機に国内で半導体製造への投資が進むことにより、より多くの雇用創造が行われるだろうという期待が寄せられています。

■まとめ

いずれの調査結果を見ても、日本国内における雇用は確実に回復傾向にあります。緊急事態宣言の全面解除を受けて、企業の採用活動が一気に増加することが考えられますが、もともと採用ニーズの高い製造業をはじめ、急速な業績回復が期待できる飲食サービスや旅行業などで早くも人材の取り合いが始まっています。

※採用市況感レポートは、統計数値をもとに分析した内容を月一回お届けします。