2026.01.15
「有効求人倍率低下」の正体は『企業のハローワーク離れ』にあり。採用担当者が今シフトすべき「採用手段のポートフォリオ化」とは?
「現場ではこれほど人手不足を感じているのに、なぜ有効求人倍率は下がっているのか?」
年間を通して採用を行う企業の担当者様であれば、最近の労働市場データを見て、このような違和感を抱いたことがあるのではないでしょうか。
厚生労働省が発表する統計データと、採用現場の肌感覚のズレ。この乖離の裏側には、単なる景気動向だけでは説明がつかない、日本の採用市場における構造的な地殻変動が起きています。
その正体こそが、「企業のハローワーク離れ」です。
本記事では、データに見る市場の変化を紐解きながら、今、採用担当者が直面しているリスクと、そこから脱却するための「採用手段のポートフォリオ化」および「ペルソナ設計」について解説します。
1. 市場は人手不足なのに、なぜハローワークの数字だけが冷え込んでいるのか
〇データと肌感覚の「ねじれ現象」
直近1年ほどの雇用統計を見ると、有効求人倍率は低下傾向(または横ばい)で推移しています。通常、景気が底堅く人手不足が叫ばれる局面では、求人倍率は上昇するはずです。しかし、現実は逆の動きを見せています。
この要因について、厚生労働省などは「製造業の求人控え」を主な理由として挙げています。確かに原材料費の高騰や円安の影響で、一部の製造業が採用を慎重にしている側面はあるでしょう。しかし、サービス業、建設業、IT業界など、多くの業界では依然として深刻な人手不足が続いており、「製造業の影響」だけでは、全体の求人数減少を説明しきれません。
〇統計に表れない「ハローワーク離れ」
ここで注目すべきは、有効求人倍率の計算根拠となるのが、あくまで「ハローワークに登録された求人数と求職者数」であるという点です。
つまり、「世の中全体の求人が減っている」のではなく、「ハローワークに出される求人が減っている」と読み解くのが自然です。
有効求職者数が横ばいで推移しているのに対し、有効求人数はじわじわと右肩下がりになっています。これは、企業が採用意欲を失ったのではなく、「ハローワークという採用チャネルに見切りをつけ始めている」という、構造的な変化を示唆しています。
2. 【企業側の視点】なぜ企業はハローワークから離れているのか
かつて「採用のセーフティネット」「まずは無料で出せる場所」として機能していたハローワークから、なぜ企業が離れているのでしょうか。特に採用人数の多い企業ほど、その傾向は顕著です。理由は大きく分けて2つあります。
①「無料」の対価としての工数コスト増大
2020年のハローワークインターネットサービスのシステム変更以降、求人票作成における入力項目や手続きが大幅に複雑化しました。詳細な情報を掲載できるようになった反面、求人作成や更新にかかる工数は激増しています。
年間数十人を採用する企業にとって、採用担当者の時間は貴重なリソースです。「掲載費は無料」であっても、その作成・管理に膨大な時間がかかり、結果として採用につながらないのであれば、人件費換算した時のコストパフォーマンス(タイパ)は極めて悪いと言わざるを得ません。
② 充足率の低下による「機会損失」リスク
ニッセイ基礎研究所(*)などのレポートでも指摘されている通り、ハローワーク経由の採用充足率は年々低下傾向にあります。
「手間をかけて求人票を作っても、応募が来ない、採用できない」という状況が続けば、企業は当然、他の手段を探します。採用ができない期間が長引くことによる事業停滞=「機会損失」こそが、企業にとって最大のリスクだからです。
また、一部報道にもあるように、ハローワーク窓口での就職実績ノルマに起因する不正事案などのネガティブなニュースも、企業の信頼感を揺るがす一因となっています。しかし、本質的な問題はそうした不祥事よりも、「採用インフラとしての機能不全」にあると言えるでしょう。
※:雇用関連統計25年5月-新規求人倍率は3年6ヵ月ぶりの低水準も、労働市場全体の需給を反映せず(ニッセイ基礎研究所)
https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=82482?site=nli
3. 【求職者側の視点】若者の「ハローワーク離れ」と民間サービスのインフラ化
企業が離れる背景には、当然ながら「求職者がそこにいない」という現実があります。特に若年層のハローワーク離れは深刻です。
〇UI/UXの圧倒的なギャップ
デジタルネイティブである20代~30代は、学生時代から洗練されたスマホアプリやWebサービスに触れて育っています。彼らにとって、ハローワークの検索システムや、実際に窓口へ足を運ばなければならないアナログな手続きは、「使いにくい」「面倒くさい」という強いストレス要因となります。
「使いにくいサービス」は、それだけで選択肢から外されます。これは若者のわがままではなく、WebサービスのUI/UXにおける当たり前の行動原理です。
「求人検索サービス」が現代のインフラに
ハローワークに代わって「仕事探しのインフラ」となったのが、Indeedや求人ボックスといった「求人検索サービス(アグリゲート型サイト)」です。
これらは、ネット上のあらゆる求人情報を集約し、スマホ一つで手軽に検索・応募ができます。
▼ハローワーク:わざわざ出向く、または専用サイトで検索する「閉じたデータベース」
△検索サービス:日常のウェブ検索の延長線上で仕事が見つかる「開かれたインフラ」
現代の求職者、特に現役世代の動線は完全に後者にシフトしています。ユーザーがいない場所に網を張っても、魚が捕れないのは自明の理です。
4. 【解決策】脱・ハローワーク依存。「採用手段のポートフォリオ化」へ
では、これからの採用担当者はどう動くべきか。答えは「ハローワークを辞めること」ではなく、「ハローワーク依存からの脱却」と「採用手段のポートフォリオ化」です。
〇「総花的」な求人の限界とAIの進化
まず理解すべきは、Indeedなどの最新プラットフォームにおける「AIマッチング」の進化です。
これらのプラットフォームでは、ユーザーの検索履歴や行動データをAIが分析し、「この人に最適な求人」を優先的に表示します。
かつてのハローワーク求人のように、「条件さえ合えば誰でも歓迎」という総花的な(ターゲットが曖昧な)求人は、AIから「特徴がない」と判断され、誰の画面にも表示されにくくなっています。
「誰でもいい」は、今の採用マーケティングにおいては「誰も来ない」と同義です。
〇「ペルソナ設計」がAI活用の鍵
AIに選ばれ、求職者に届く求人にするためには、「ペルソナ設計」が不可欠です。
「どんな経験を持ち、どんな志向性を持つ人物か」を明確に定義し、そのペルソナに向けた言葉で求人を書く。そうすることで初めて、AIはその求人と親和性の高い求職者をマッチングさせることができます。
〇リスク分散としての「ポートフォリオ」
資産運用で「卵を一つのカゴに盛るな」と言われるように、採用チャネルも分散が必要です。
「ハローワークだけ」「大手求人サイトだけ」という一本足打法は、その媒体の集客力が落ちた瞬間に採用がストップするリスクを孕んでいます。
ターゲット(ペルソナ)に合わせて、適切なメディアを組み合わせる。この「採用ポートフォリオ」の構築こそが、年間を通して安定採用を実現する鍵となります。
5. 【事例紹介】職種別・採用ポートフォリオの活用イメージ
具体的にどのような組み合わせが考えられるか、3つのケーススタディを紹介します。
〇ケースA:地域密着の製造・軽作業スタッフ
地元の主婦層やシニア層、および近隣の現役世代を狙う場合。
【ポートフォリオ】:ハローワーク + 求人検索サービス(Indeed等) + 折り込みチラシ
【戦略】:依然として紙媒体やハローワークを利用する高年齢層をカバーしつつ、スマホで仕事を探す主婦・フリーター層を「求人検索サービス」で拾うハイブリッド型。地域名を掛け合わせたキーワード対策が有効です。
〇ケースB:若手営業職・販売サービス職
スマホファーストな20代~30代前半を狙う場合。
【ポートフォリオ】:SNS広告(Instagram/TikTok) + 求人検索サービス + 特化型Webメディア
【戦略】:ハローワークの比重は極限まで下げます。受動的にスマホを見ている層に「SNS広告」で認知させ、興味を持った層を求人検索サービスや自社採用サイトで刈り取ります。動画での雰囲気訴求が必須です。
〇ケースC:専門職(エンジニア・施工管理など)
有効求人倍率が極めて高く、待っていても来ない層を狙う場合。
【ポートフォリオ】:人材紹介エージェント + ダイレクトリクルーティング + 専門求人サイト
【戦略】:「待ち」の求人広告だけでは採用できません。エージェントやスカウトメールを活用した「攻めの採用」を主軸に、専門性の高いメディアへの露出で信頼性を担保します。
6. まとめ:「情報」と「物語」で選ばれる企業へ
ハローワークの有効求人倍率低下は、単なる景気の波ではなく、採用市場のプレイヤーとルールが入れ替わったことによる必然の結果です。この変化に気づき、いち早く「脱・ハローワーク依存」に舵を切った企業だけが、人材獲得競争を勝ち抜くことができます。
〇スペック条件から「フィット感」へ
最後に、ポートフォリオと並んで重要なのが「コンテンツ」です。
給与や勤務地といった「スペック情報」は、AIマッチングの前提条件に過ぎません。求職者が最終的に応募ボタンを押す決め手は、「この会社で働く自分がイメージできるか」というフィット感です。
・職場のリアルな日常を伝える動画
・社員の想いを語るインタビュー記事
・企業のミッションやストーリー
これらを自社の採用サイトやSNSを通じて発信し、ペルソナの感情に訴えかける「ストーリーとしての採用」が求められています。
〇戦略的パートナーとしての天職市場
しかし、これら全て(広告運用、ペルソナ設計、記事・動画制作、SNS運用…)を、採用担当者様だけで行うのは現実的ではありません。業務負荷が高まりすぎては、本末転倒です。
天職市場は、Indeed・求人ボックスなどの「運用型広告」のプロフェッショナルであると同時に、企業の魅力を掘り起こす「採用サイト制作」「コンテンツ制作」「SNS運用代行」までを一気通貫で支援するパートナーです。
メディアを売って終わりではなく、貴社の採用ポートフォリオ全体の設計と運用を伴走支援いたします。
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