COLUMN 採用お役立ちコラム

2022.11.16

今さら聞けない物流企業の2024年問題…今からやるべき対策は?

ー はじめに ー
ワークライフバランスを重視する目的で制定された「働き方改革関連法」により、様々な業界で労働時間の削減がはかられてきました。業務特性から長時間労働になりがちな物流業界においても働き方改革の波が押し寄せ、2024年4月から時間外労働の規制が適用されます。これを「物流企業の2024年問題」と捉える企業も多く、現状の体制を続けていくと法令違反となってしまいます。そこで目前に迫った規制適用まで、物流会社がどのような対策を取るべきかを紹介してまいります。

【そもそも2024年問題とは?】

2024年4月1日に施行される「働き方関連法」で、自動車運転業務の年間時間外労働時間に規制がかかります。その上限が960時間となるのですが、ここに物流業界特有の問題が大きな影を落としています。それが長時間労働の常態化。若手ドライバー不足と高齢化による労働力不足、そしてEC市場の急成長に伴う宅配便の取り扱い件数の増加も重なり、労働環境改善は一筋縄ではいかない状況が続いているのです。

労働環境の改善自体は決して悪い話ではないのですが、実は現状のままでいると様々なリスクを抱え込むことになります。

◎物流会社が請け負う配送量の減少

ドライバーの数に余裕がない状況である以上、1日に運べる荷物の量や回数は確実に減少することが見込まれます。物量が減れば物流会社は売上が減少するので、運賃を上げなければ経営は成り立たなくなります。しかし、6万社を超える物流会社同士の過当競争が進んでいる中、値上げをすることでこれまでの取引先が安価な業者への乗りかえる可能性もあります。つまり、物流企業にとってはこれまで以上に難しい経営の舵取りが求められるのです。

◎ドライバーの収入減少から来る離職増

物流ドライバーのほとんどが、走行距離に応じて通行手当が支給されており、これまでは長距離を走れば走るほど収入が右肩上がりに増えていく仕組みでした。しかし、労働時間が規制されるとこれまでのように長距離を走る機会が減り、距離も短くなるので必然的に通行手当は減少。収入が減少すれば生活が成り立たなくなり、違う業界へ転職するケースも増えていく可能性があります。物流会社にとってもさらなる人手不足が進み、負のスパイラルから抜け出せないところも増えていくでしょう。

【2024年問題の回避方法】

本来なら労働環境の改善によって、労働者の健康で安全な生活を実現し、働くことへのモチベーションが高く維持され、企業にとっても過重労働による離職を防ぐことで健全な経営を実現できるはずです。この2024年問題を回避するためには、以下に挙げる事例が現時点での有効策と考えられています。

<人材不足の解決事例>

◎中継輸送の普及拡大

国交省/「2024年問題」に備え中継輸送実現のポイント解説

https://www.lnews.jp/2022/04/o0426306.html

国土交通省は2022年4月26日、トラックによる中継輸送の普及促進をはかるためのリーフレットを作成。これまで泊まりがけの多い長距離輸送のルートに中継拠点を設置し、複数の物流会社がシェアすることで、上限規制を遵守しながら長距離輸送と同じ水準の物流を確保することが可能となります。現在、中継拠点を設置する物流会社は全体の16%程度とまだまだ低く、認知拡大を進めることで業務負荷の軽減と物流量の維持を目指します。

◎無人フォークリフトなどにより省力化

ドライバーに朗報? 三菱重工が荷役作業までやってくれる無人フォークの実証実験

ドライバーに朗報? 三菱重工が荷役作業までやってくれる無人フォークの実証実験

倉庫内などの屋内物流はDX化による自動化が進んでいますが、トラックの積み下ろしなどの荷役においてはスピードや正確性に課題があり、今も有人によるオペレーティングが主流です。その状況に対し、三菱重工や三菱ロジスネクスト、鴻池運輸の3社による無人フォークリフトの実証実験を2024年3月までに開始すると発表。荷役の自動化を実現することで、物流ドライバーの業務負荷の軽減や労働災害の防止により、労働時間の削減につながると大きな注目を集めています。

<運用面の改善事例>>

◎複数企業による共同配送の運用

コンビニ3社/北海道の共同配送で成果、走行距離48%減

https://www.lnews.jp/2022/10/o1017403.html

セブン-イレブン・ジャパン、ファミリーマート、ローソンのコンビニ3社が2022年2月、店舗密度の低い北海道函館エリアにおいて、「コンビニの配送センター間の物流の共同化」と「遠隔地店舗(買い物困難地域)の配送の共同化」について実証実験を実施。その結果、走行距離および走行時間短縮を実現することができました。今後はSDGsの観点から新しいコンビニ物流の形をつくることを目指し、コンビニ各社およびサプライチェーンを構成するステークホルダー全体で検討されるそうです。

◎IT化・DX推進による輸送効率の効率化

倉庫内の物流テック市場/バース予約・受付システム約7割増

https://www.lnews.jp/2022/10/o1004305.html

2022年10月4日に発表した矢野経済研究所の調査によると、国内の倉庫内物流テック市場において2021年度のバース予約/受付システムの導入拠点数ベースの市場規模は、前年度比169%の1100拠点と推計されました、さらに2024年度まで、物流テックの導入件数が伸び続けるとの予測結果を打ち出しました。これは従来の投資力があって自社内に専門のIT部門や人材を抱えている事業者に限られていた物流テックが、手頃な価格で標準的なパッケージの導入ができるSaaS型システムが中堅事業者に広がっていることを受け、さらなる拡大が期待できるとしています。

<人手不足の解消に関する施策>

◎M&Aや提携による人材確保

2024年問題が影響?物流業界のM&A増加の背景をわかりやすく解説

https://www.nihon-ma.co.jp/columns/2022/x20220704/

ここ4〜5年で、物流業界のM&Aは年を追うごとに増加傾向に。2024年問題が大きな理由として挙げられていますが、20年前に行われた規制緩和によって新規参入や独立するケースが急増。独立当時は50歳だった経営者が70歳に差し掛かったことで、事業継承などを理由に会社を売却する理由となっています。そこに労働環境の改善や人員確保を目指す企業との利害が一致したことも大きな影響を与えていると考えられます。今後も大手を中心に、M&Aや業務提携などが進むことが予測できるでしょう。

◎働き方に対する多様化の推進

トラガール促進プロジェクト トラックドライバーをめざす女性応援サイト

https://www.mlit.go.jp/jidosha/tragirl/

ドライバー派遣や個人事業主の単発発注のほか、「トラガール」と呼ばれる女性の積極的な活用も人的確保には有効とされています。特にアクティブワークへの女性進出が求められている今、女性が働きやすさを実感できる環境や制度の整備は、今後の課題解決に向けて大きな効果がえられるのではないかと業界全体で注目を集めています。

【最後に】

2024年問題の解決に向けて様々な取り組みを行う企業も今後増えていくでしょうが、一番有効な対策が「人手不足の解消」と考えられます。これから採用活動により力を入れていくにあたっては、できるだけ経験人材を確保するためにも、進行中であっても行っている対策を求人広告上でアピールすることも重要な対策となるでしょう。

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