2021.02.16
採用市況感レポート2020年12月(厚生労働省調査データから)
皆さんこんにちは。株式会社天職市場アナリストチームです。
2020年12月分の一般職業紹介状況が2021年1月29日に、毎月勤労統計調査(速報)が2021年2月9日に公表されました。こちらに基づいて2020年12月分の採用市況感レポートをお届けします。
有効求人倍率及び新規有効求人数の動き(2021年1月29日データ)
(厚生労働省 一般職業紹介状況(職業安定業務統計)より)
コロナ第3波の感染再拡大の影響を受け、有効求人倍率は、12月は1.06と前月から変化はなく横ばいとなりました。12月はGOTOキャンペーンの停止など後半に向けて急速に経済の先行き不透明感が広がりました。そのため、年末の人材需要が増える時期にあっても求人倍率は上がっていません。1月は緊急事態宣言の発令もあり、有効求人倍率は横ばいないし微減が見込まれます。
新規有効求人数推移(季節調整値)は前月比-3,951件と、若干の減少に転じています。パート求人数が落ち込む一方で、フルタイムの募集は増加しており、コロナ禍の影響を受けつつも正社員を中心とした求人は引き続き増加傾向が続くと見られます。
■毎月勤労統計調査速報2020年11月(2021年1月7日データ)
(厚生労働省 毎月勤労統計調査令和2年12月速報値より)
2020年12月毎月勤労統計調査速報で、入職の大きな伸びがあったのは「建設業」「情報通信業」「不動産・物品賃貸業」「学術研究等」「教育、学習支援業」「医療、福祉」でした。
建設業は業種別の求人倍率をみても全般的にニーズが高く、躯体工事や土木、測量、電気設備など幅広く4倍以上の求人倍率となっています。
医療福祉は高齢者介護職と医療系サービスともに2.3倍から3.3倍と求人倍率が高く、こちらも人手不足が続いています。
また、情報通信業や教育学習支援も採用増が続いており、求人募集も引き続き活発です。
パートタイムの雇用は全体に低調で、充足率も比較的高くなっています。
■トピックス 令和2年上半期雇用動向調査
2021年2月3日に厚生労働省から、「令和2年上半期雇用動向調査」の結果が発表されています。
https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/koyou/doukou/21-1/index.html
2020年1月から6月にかけての雇用の統計データを振り返る調査結果で、タイムリーな情報ではありませんが、コロナの影響を受けてどういった変化が出ていたのか、振り返る意味でデータを見てみましょう。
こちらに示した表は、産業別の入職者数・離職者数をまとめたものです。
半期を通してみたときに、入職が多く離職が少ない業界は「建設業」「情報通信業」「医療、福祉」です。これらの産業は、コロナの影響を受けて従事者が増加した業界となります。
入職と離職にほとんど差がない業種としては「製造業」「運輸、郵便業」があげられます。この二つの産業は、コロナの影響による産業全体の大きな人員移動は起きていないと考えられます。
入職よりも離職が大きく上回る産業は「卸売業、小売業」「宿泊業、飲食サービス業」が挙げられます。外出自粛の影響が直撃した形で、宿泊飲食業は13万5千人以上が他業種へ異動したと考えられます。
全体的にみて、小売・飲食から情報通信や医療福祉への人材移動は大きな規模で起きている、あるいは今後も続くとみられ、人材採用の際にはこれらのトレンドを下敷きに考える必要があります。
■まとめ
執筆の2021年2月9日時点では、緊急事態宣言の延長が決定され、新規感染者数は減少したものの、病床使用率が下がらないという状況です。
企業の四半期決算などでも、コロナによって業績にプラスの業界と、業績がマイナスとなる企業の明暗もでており、より人材の必要な業界と、人材が流出している業界がはっきりしてきています。
人手不足業界では決して充足率は高いと言えない状況が続いており、経験者採用から異業種経験者の採用へシフトするなど、ターゲットを明確にして募集を工夫することが必要となっています。
※採用市況感レポートは、統計数値をもとに分析した内容を月一回お届けします。