COLUMN 採用お役立ちコラム

2021.08.17

採用市況感レポート2021年6月(厚生労働省調査データから)

皆さんこんにちは。株式会社天職市場アナリストチームです。
2021年6月分の一般職業紹介状況が2021年7月30日に、毎月勤労統計調査(速報)が2021年8月6日に公表されました。こちらに基づいて2021年6月分の採用市況感レポートをお届けします。

■有効求人倍率及び新規有効求人数の動き(2021年7月30日データ)

有効求人倍率(季節調整値)

(厚生労働省 一般職業紹介状況(職業安定業務統計)より)

6月の有効求人倍率は1.13と、前月から+0.04ポイントと上昇トレンドとなりました。
求人を控えがちな4月や5月に比べて6月は人材採用に向けて動き始める企業が多く、併せて6月20日に3回目の緊急事態宣言が解除されたことにより、多くの企業が新規求人を出したことがプラスに転じたと見られます。しかし、4回目の緊急事態宣言が7月12日に発出されたことにより、7月は横ばいまたは下降に転じるのではないかと考えられます。

新規有効求人数推移(季節調整値)

(厚生労働省 一般職業紹介状況(職業安定業務統計)より)

新規求人数推移(季節調整値)は前月比+36,578件と、求人数に大きな伸びを見せました。6月は例年採用市場が動き出す時期になりますが、求人件数は増加傾向が続いており、製造業の+39.3%を中心に人材需要が戻りつつある様子が伺えます。

新規求職申込件数推移(季節調整値)

(厚生労働省 一般職業紹介状況(職業安定業務統計)より)

新しい仕事を探し始めようとハローワークに求職登録をした、求職者の数を示しているのが新規求職申込件数(季節調整値)です。2021年6月の求職者数は対前月比で+19,896名と大きな伸びを見せました。例年6月は求職者数が伸びやすい時期であるため、7月はその反動で若干の減少となるのではないかと思われます。

全体の有効求人倍率は若干ではありますが増加となり、新規求人数推移と新規求職申込件数は大幅増となりました。市場が動き始める例年通りのトレンドとの見方もできますが、同時に緊急事態宣言が転職市場に大きな影響を与えていることを改めて示したともいえるでしょう。

■毎月勤労統計調査速報2021年6月(2021年8月6日データ)

常用雇用及び労働異動率

(厚生労働省 毎月勤労統計調査より)

2021年毎月勤労統計調査速報で、入職の大きな伸びがあったのは「飲食サービス業」「教育、学習支援業」「医療、福祉」でした。一方で、パートタイムが全体的に減少傾向にありました。
「飲食サービス業」は緊急事態宣言解除後の需要拡大を見込んで労働者数が戻ってきていると見受けられますが、4回目の宣言発出と新型コロナウィルスの感染拡大、それに伴う飲食店への継続的な営業自粛要請などを鑑みると、一時的なものに止まるのではないかと思われます。
「教育、学習支援業」と「医療、福祉」は引き続き大きな伸びを見せており、特に「教育、学習支援業」においてはICT教育関連での人材募集が大きく作用していると考えられます。

■トピックス

今回は雇用調整助成金に関連する記事を3件引用します。

〇日本商工会議所 雇用調整助成金年末まで延長

https://www.jcci.or.jp/news/2021/0802151519.html

新型コロナウィルス感染拡大の影響により、特に経営状況の厳しい中小企業等の雇用維持を支援する雇用調整助成金等の特例措置ですが、7月30日に厚生労働省より2021年末までの支援延長が発表されました。これは原則的な措置を含めて、リーマンショック時よりも長い期間での対応となります。この措置によってコロナ禍においても、しばらくの間は雇用維持が継続されていくことが考えられます。

〇日本経済新聞 雇用保険料引き上げ、22年度にも 雇調金増大で財源不足

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA216MN0R20C21A7000000/

その一方で、雇用調整助成金の給付が増えたことによって財源がひっ迫している状況を鑑みた厚生労働省は、助成金の支給期間延長とほぼ同時期に、雇用保険の保険料率を引き上げる検討に入ることも発表しています。これは失業保険における職を失った際の生活保証や雇用安定・能力開発などの維持を目的とするもので、予定では2022年度からの引き上げを検討しているようです。

〇厚生労働省 雇用保険の基本手当日額の変更(引き下げ)

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_20077.html

新型コロナウィルス感染拡大の影響により、特に経営状況の厳しい中小企業等の雇用維持を支援する雇用調整助成金等の特例措置ですが、7月30日に厚生労働省より2021年末までの支援延長が発表されました。これは原則的な措置を含めて、リーマンショック時よりも長い期間での対応となります。この措置によってコロナ禍においても、しばらくの間は雇用維持が継続されていくことが考えられます。

雇用調整助成金の支給延長によって企業の雇用維持は今後も継続されることが見込まれますが、ワクチン接種等の進捗を見据えた人材の流動化もはじまっています。求職者においては失業給付の引き下げによって安定収入の実現を目指すべく、転職市場がさらに活性化することが考えられます。企業においては雇用保険料の引き上げにより負担が大きくなり、採用では本当に必要な人材であるかどうかを厳選していく傾向となっていくでしょう。

■まとめ

7月12日に4回目の緊急事態宣言が発出されたにも関わらず、7月下旬から新型コロナウィルス感染が再び拡大しています。全国でも過去最多を更新するなど、国内の感染状況が収束するにはまだまだ時間がかかりそうです。
ただし、世界的な経済回復傾向を受けて製造業等は今後も横ばいから微増での需要回復が見込まれている上、9月~10月には多くの業種で人手不足感が高まっていくことも予想されています。本格的な回復期に差し掛かる前に採用計画を明確にし、採用施策を強化しながら先手を打つようにしていきましょう。

※採用市況感レポートは、統計数値をもとに分析した内容を月一回お届けします。