COLUMN 採用お役立ちコラム

2021.10.19

採用市況感レポート2021年8月(厚生労働省調査データから)

皆さんこんにちは。株式会社天職市場アナリストチームです。
2021年8月分の一般職業紹介状況が2021年10月1日に、毎月勤労統計調査(速報)が2021年10月8日に公表されました。こちらに基づいて2021年8月分の採用市況感レポートをお届けします

■有効求人倍率、新規求人数及び新規求職申込件数の動き(2021年10月1日データ)

有効求人倍率(季節調整値)

(厚生労働省 一般職業紹介状況(職業安定業務統計)より)

8月の有効求人倍率は1.14と、前月から0.01ポイント下回る結果となりました。もともと8月は市場が一旦落ち着く時期でもありますし、7月12日に発出されていた4回目の緊急事態宣言の延長が影響していることも考慮できます。これまでの経緯から8月は横ばい、または前月より数値が下回るのではないかと考えられていたので、微減という結果は予測の範囲内で落ちついたといえるでしょう。

新規有効求人数推移(季節調整値)

(厚生労働省 一般職業紹介状況(職業安定業務統計)より)

新規求人数推移(季節調整値)は前月比+7193と、若干ではありますが増加に転じています。産業ごとの数値をみると、製造業が39.3%増と大きく数値を伸ばしていて、さらにサービス業(他に分類されないもの)が18.7%、情報通信業が16.7%、宿泊業と飲食サービス業が12.3%の増加となっています。景気が回復しつつある海外向け生産需要の増加を見込み、製造業での求人が増えたことが今回の結果につながったと見受けられます。

新規求職申込件数推移(季節調整値)

(厚生労働省 一般職業紹介状況(職業安定業務統計)より)

新しい仕事を探し始めようとハローワークに求職登録をした、求職者の数を示しているのが新規求職申込件数推移(季節調整値)です。8月は前月比+ 6874件と、微増ではありますが3ヶ月連続で伸びを見せました。上昇トレンドにあることを考えますと、徐々にではありますが、求職者の動向もコロナ禍以前の状態に戻りつつあると感じられます。

7月12日に発出された4回目の緊急事態宣言ですが、8月も全国的に感染者数が減ることはありませんでした。9月末まで宣言の延長が行われたことを鑑みると、9月もこれまで同様に有効求人倍率は横ばい、または微増か微減となることが考えられます。しかし、9月後半から急速に感染者数が激減し、9月末には緊急事態宣言が全面解除されました。これから経済再活動に備えた動きが見込まれていますが、特に自粛要請の煽りを受けた宿泊業や飲食サービス業の求人案件の増加が期待できるでしょう。

■毎月勤労統計調査速報2021年8月(2021年10月8日データ)

常用雇用及び労働異動率

(厚生労働省 毎月勤労統計調査より)

毎月勤労統計速報の概況によりますと、現金給与総額は274,987円と前月比0.7%増となりました。そのうち一般労働者が356,287円(1.4%増)となっており、所得内給与では313,581円(0.8%増)という結果となっています。また、パートタイム労働者の比率は31.24%で前月比0.32ポイントの上昇、時間当たりの給与は1,230円(1.2%増)となっています。これで給与水準は3ヶ月連続で伸びを見せており、10月1日から施行される過去最大幅の最低賃金引き上げを受け、給与水準はさらに上昇することが見込まれています。
労働異動においては、「建設業」「教育、学習支援業」「医療、福祉」が引き続き伸びを見せています。「飲食サービス業等」においては退職者の補充傾向が中心となっており、緊急事態宣言が解除された後を見通した動きが見られます。逆に「生活関連サービス」「複合サービス」の低下が目立つ結果となりました。

■トピックス

今回は景気および雇用動向に関するニュースを3点ピックアップし、ご紹介いたします。

〇大企業景況感、製造業4ポイント改善 9月日銀短観
(日本経済新聞 2021年10月1日)

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB293DF0Z20C21A9000000/

日銀が1日に発表した9月の全国企業短期経済観測調査(短観)によりますと、大企業のうち製造業の景況感を示す業況判断指数(DI)は、前回の6月調査からプラス18と改善。これで5四半期連続での改善となり、大企業非製造業の同DIはプラス2で小幅に改善しました。
海外でのコロナ感染の再拡大によって半導体の供給遅れ、原材料高騰などの不安材料も目立つようになっているものの、日本国内においては製造業がけん引する形で、しばらくは経済の持ち直しが続くものと見込まれています。

〇岸田政権、経済好循環へ停滞打破が不可欠
(産経新聞 2021年10月4日)

https://www.sankei.com/article/20211004-NBCMLDVA7NP25DEWETGPFTRHRA/

2021年10月4日に発足した岸田文雄内閣ですが、本格的な経済政策のテコ入れが行われる模様です。格差是正に焦点を当てた「新しい資本主義」を打ち出すなど、第2次安倍晋三政権の経済政策、アベノミクスで道半ばだった成長と分配の好循環を実現したい考えを示しました。
今後の政策では、コロナ禍の影響を受けた企業に対する支援策として事業規模に応じた給付金の支給、非正規社員や子育て世帯などへの現金給付などが見込まれています。これからは国内消費の回復がある程度実現することに加え、企業の人材雇用も比例して回復していくのではないかと予測されます。

〇中国バブルは崩壊する、だがそれは日本人が思うバブル崩壊ではない
(ニューズウィーク日本版 2021年9月29日)

https://www.newsweekjapan.jp/kaya/2021/09/post-158.php

中国の大手不動産企業である恒大集団の経営不安に端を発した、中国国内におけるバブル経済の崩壊についての予測記事が掲載されています。記事によりますと中国経済は現状、かなりの危機水準であると捉えられており、何かしらの処理が必要だと紹介しています。
日本でもバブル崩壊やリーマンショックなど、過去に大規模な経営危機が起こっています。しかし中国は重要性の低い企業や金融機関を救済しないなど、ハードランディングを選択する可能性が高く、日本のような連鎖的経済危機は起こらず、影響も限定的であるとの見方がされています。

■まとめ

これまでの経緯を見ても、新型コロナウィルスの感染状況は景況感に大きな影響を及ぼしています。ワクチン接種が進み、私たちも感染予防対策を徹底してきたことにより、9月下旬から感染状況は大幅に抑制されています。今後は状況を横目で見ながら景気浮揚が進んでいくと考えられ、すでに飲食サービス業などにおいては退職者の補充が行われているほか、本格的な稼動再開に向けた増員募集も行われています。また、半導体の供給不安など海外での混乱が収束すれば、製造業や物流業などを中心とする産業での人材採用が加速すると見込まれています。
現在は人手不足による「採用」が大きな課題となっていますが、採用が進むことで今度は「定着」にも取り組む必要があります。ただ人を集めるだけではなく、いかにして戦力化して長く定着させるか。その対策を今から進めていきましょう。

※採用市況感レポートは、統計数値をもとに分析した内容を月一回お届けします。