COLUMN 採用お役立ちコラム

2021.12.24

採用市況感レポート2021年10月(厚生労働省調査データから)

皆さんこんにちは。株式会社天職市場アナリストチームです。
2021年10月分の一般職業紹介状況が2021年11月30日に、毎月勤労統計調査(速報)が2021年12月7日に公表されました。こちらに基づいて2021年10月分の採用市況感レポートをお届けします。

■有効求人倍率、新規求人数及び新規求職申込件数の動き(2021年11月30日データ)

有効求人倍率(季節調整値)

(厚生労働省 一般職業紹介状況(職業安定業務統計)より)

10月の有効求人倍率は1.15と、前月から0.01ポイント下回る結果となりました。9月30日に緊急事態宣言が全面解除となり、企業の採用活動が一気に増えるという見通しの中での微減という結果となりました。この数字だけを見ると、採用ニーズが想定していたよりも低かったのではないかと解釈してしまうかもしれません。そこは求人案件と求職者との割合を占める「倍率」ですので、実際の市場動向については冷静に判断していく必要があります。詳しくは下記にて解説いたします。

新規有効求人数推移(季節調整値)

(厚生労働省 一般職業紹介状況(職業安定業務統計)より)

企業が新たな人材を求めて採用をかける新規求人数推移(季節調整値)を見ると、対先月比0.5%増(+2,913件)という結果となりました。増加数自体はゆるやかな増加という感じですが、グラフを見るとパート以外の一般労働者の数字が大きな伸びを見せているの対し、パート求人が-4,785件となり、全体の数字を押し下げたことが要因となっています。業界に目を向けてみると、製造業が35.9%の大幅増、教育,学習支援業が12.8%増、情報通信業が11.1%増、サービス業(他に分類されないもの)が10.3%増という結果となっています。

新規求職申込件数推移(季節調整値)

(厚生労働省 一般職業紹介状況(職業安定業務統計)より)

そしてハローワークへ新しい仕事を求めて求職登録した人数を示す新規求職申込件数推移(季節調整値)を見ると、こちらも対前月比0.6%増(+4,966件)という結果となっています。前月のマイナスからわずかな数値でありますが、求人案件と比例する形で増加していることが、結果的に有効求人倍率に影響を与えている結果となりました。

需要と供給の市場バランスが拮抗したことで、結果的に有効求人倍率の微減となりました。これから冬のボーナスシーズンに向けて、本格的な求職活動が活発になることが予測されます。また、製造業をはじめとする求人ニーズが相変わらず増加傾向にある上、年末年始の短期パート採用も例年増加する時期。11月以降も市場バランスの拮抗は継続され、有効求人倍率は微増または微減となる見通しです。

■毎月勤労統計調査速報2021年10月(2021年12月7日データ)

常用雇用及び労働異動率

(厚生労働省 毎月勤労統計調査より)

毎月勤労統計速報の概況によりますと、現金給与総額は271,023円で対前月比0.2%増という結果となりました。そのうち一般労働者が350,338円(0.8%増)、パートタイム労働者が97,435円(1.8%減)。所定内給与については一般労働者が316,345円(0.3%増)で、パートタイム労働者の時間当たり給与は1,227円(2.1%増)となっています。一部の数字で微減となっているものの、共通事業所による現金給与総額は1.0%増と給与水準は4ヶ月連続で増加(一般労働者0.8%増、パートタイム労働者0.8%増)となりました。この背景には10月1日の最低賃金引き上げ、そして就業形態計の所定外労働時間が9.8時間で2.1%増となった影響が出ていると考えられます。
労働異動においては、「建設業」「教育、学習支援業」「医療、福祉」が相変わらずの伸びを見せています。「飲食サービス業等」は労働者総数で4.6%増と一番伸びているものの、パートタイム労働者に比率は先月よりもかなり微妙でありますがマイナスに。これは退職者の補充において、一般労働者に比重を置いた採用が行われていると考えられています。

■トピックス

今回は新型コロナウィルスの感染状況に左右された、日本経済の回復傾向についての記事を2つ紹介いたします。

〇51業種中24業種が新型コロナ前の水準を上回る ― TDB景気動向調査:2021年11月
(PR TIMES 2021年12月3日)

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000382.000043465.html

株式会社帝国データバンクは2021年11月の国内景気動向について、全国2万3679社を対象に調査・集計を行いました。その結果、多くの業種でコロナ禍以前の水準を回復したことを確認しました。特に「製造」「サービス」などの10業界、51業種のうち42業種での改善傾向が目立ちました。その中でも、感染拡大がはじまる直前の2020年1月を上回る水準となったのが24業種を数えています。オミクロン株の不安はあるものの、国内における新型コロナウィルスの感染状況が落ち着きを見せる傾向にあります。しかし原油などの資源高騰や材料不足に伴い、仕入単価・販売単価の上昇は現在も継続しています。

〇来年度の経済成長率 引き上げる方向で検討へ 政府
(NHK NEWS 2021年12月6日)

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20211206/k10013376001000.html

2022年度の経済成長率について、政府は7月時点での見通しから引き上げる形で、国民総生産(GDP)の変動を除いた実質2.2%程度で検討するとの方針を打ち出しました。これはコロナ禍で痛手を負った世帯や事業者などへの支援や経済再生への対策を決め、一般会計の総額が過去最大の35兆9000億円余りとなる、2021年度の補正予算案の編成が要因とされています。この政府の動きに対し、民間のエコノミストからはGDPの押し上げ効果は1~2%との見方もあり、これから政府が見通しをどの程度引き上げるかに注目が集まっています。

■まとめ

景気が回復傾向にあって経済成長率の上方修正が検討される中、求人市場においては2022年第2四半期あたりから人材の取り合いが一段と厳しくなるという予測も行われています。これまでは企業が求職者を選んで採用する流れであっても、今後は求職者から企業が選別され、人材確保が難しくなってくるとも考えられます。
いくら競合他社に先駆けて採用対策を講じていても、面接での対応次第で内定辞退というケースとなることも十分ありえます。そこで最後に採用に関する注意点として、新しいキーワード「コロハラ」について紹介したいと思います。

〇やってしまいがちな無意識コロハラ!その言動は大丈夫?

https://news.goo.ne.jp/article/doctortrust/bizskills/doctortrust-20211202094125548.html

コロハラとは「コロナハラスメント」の略語で、コロナ禍によって改めて生まれました。以下に挙げるポイントは面接応対での好印象・悪評の分かれ目にもなりますので、セクハラやマタハラ、SOGIハラ同様に注意を払いたいところです。
■飲食行事への参加の強要は絶対に避けましょう
■隣の人は違う価値観を持っているかもしれないと常に考えましょう
■もしあなたと違う価値観を持っていても、批判的な発言は控えましょう

求人広告や求人票でいかに求職者を惹きつける、魅力的な情報を提供するかはこれまで通りに対応していく必要があります。その上で口コミサイトへの対策、選考過程における求職者から共感を得るための情報提供など、細かなところへの注意が必要となります。「応募が来ればこっちのもの」と思い込まず、綿密に対策を講じたコンテンツの提供や対応によって想定外のリスクを払拭する採用活動を行っていきましょう。

※採用市況感レポートは、統計数値をもとに分析した内容を月一回お届けします。