2022.02.21
採用市況感レポート2021年12月(厚生労働省調査データから)
皆さんこんにちは。株式会社天職市場アナリストチームです。
2021年12月分の一般職業紹介状況が2022年2月1日に、毎月勤労統計調査(速報)が2022年2月8日に公表されました。こちらに基づいて2021年12月分の採用市況感レポートをお届けします。
■有効求人倍率、新規求人数及び新規求職申込件数の動き(2022年2月1日データ)
(厚生労働省 一般職業紹介状況(職業安定業務統計)より)
2021年12月の有効求人倍率は1.16と、前月から0.01ポイント増という結果となりました。2021年における有効求人倍率の平均は1.13となり、グラフ推移を見ると6月以降が平均以上の数値を記録しています。後ほど解説いたしますが、この辺りから求人市場の潮目が変わったことが伺えます。なお年間平均値は、昨年の1.18から0.05ポイント減少しています。
(厚生労働省 一般職業紹介状況(職業安定業務統計)より)
企業が新たな人材を求めて採用をかける新規求人数推移(季節調整値)は、対先月比1.0%増(+37,745件)という結果となりました。全体的に増加傾向にある中、特にパート求人数が前月より+20,267件と大幅に増加。全体の数値を大幅に押し上げている要因となっています。産業別の傾向を見ると、製造業が34.6%増、情報通信業が20.4%増、運輸業、郵便業が16.2%増、サービス業(他に分類されないもの)が15.1%となっています。特に年末年始の短期アルバイトなど、時期的な要因も重なっていることも増加の理由に挙げられるでしょう。
(厚生労働省 一般職業紹介状況(職業安定業務統計)より)
ハローワークへ新しい仕事を求めて求職登録した人数を示す、新規求職申込件数推移(季節調整値)を見ると対前月比3.0ポイントの減少(−11,770件)となりました。10月11月と増加傾向にあったところ、一転して減少という形になりました。パート求職者はほぼ横ばいなのに対し、それ以外での数値が落ちていることが大きな要因となっています。
12月はほとんどの企業でボーナスが支給される月でありますし、新年度を見据えた情報収集の時期とも言われています。それゆえに求職者の動きが若干鈍くなると考えられますが、人材を求める企業が急増しているのに対し、求職者数が減少したことが今回の有効求人倍率の微増となった要因となっています。前月と同じ数値を示しているものの、内訳を見るとこれまで「買い手市場」から「売り手市場」へ潮目が変化しているとも考えられます。今後は採用難のフェーズに入ることも十分想定できますので、楽観視せずに早めの対策を打つことが必要でしょう。
■毎月勤労統計調査速報2021年12月(2022年2月8日データ)
(厚生労働省 毎月勤労統計調査より)
毎月勤労統計速報の概況によりますと現金給与総額は546,580円で、前月から0.2%の減少という結果となりました。そのうち一般労働者が749,358円(0.2%増)、パートタイム労働者が112,236円(0.9%増)という結果に。所定内給与については一般労働者が315,922円(0.2%増)で、パートタイム労働者の時間当たり給与は1,221円(1.3%増)となっています。
給与水準は全体の伸びは落ち着きを見せているものの、パートタイム労働者が1.3%増となりました。この背景には就業形態計の所定外労働時間が10.3時間で5.1%増という状況が大きく影響しています。残業による手当が増えたことによる影響が出ていると考えられます。特に時給労働であるパートタイムで、その傾向が顕著に表れました。
労働異動においては「生活関連サービス等」と「複合サービス事業」で総数が減少となっていますが、特に「生活関連サービス等」の離職率が高く、深刻な状況になりつつあることが伺えます。逆に「飲食サービス業等」「教育、学習支援業」「医療、福祉」が前月に引き続いて大幅な増加となっており、飲食業界の業況回復と併せて人材の流入が目立つ結果となっています。
■トピックス
コロナ禍は多くの産業に多大なインパクトを与え、企業の採用活動にもかなりの影響がありました。雇用維持においてもリモートワークや副業の推進など、多くの人の働き方に大きな変化がありました。そこで今回は求職者の労働意識や動向を知るという意味を込めて、「副業」や「フリーランス」に焦点を絞ったニュースをご紹介いたします。
○2021年12月度 アルバイト・パート募集時平均時給調査【三大都市圏(首都圏・東海・関西)】
https://jbrc.recruit.co.jp/data/data20220117_2084.html
リクルート社の調査研究機関である「ジョブスリサーチセンター」が、三大都市圏における2021年12月期のアルバイト・パート募集における平均時給の調査を実施、結果報告を行いました。
この報告によりますと、平均時給は対前月15円増の1,115円という結果に。2006年1月度の調査開始より、2021年9月度から4ヶ月連続で過去最高額を更新しています。これは最低賃金が引き上げられたことが要因にありますが、雇用する企業側は人件費が高くなることで、アルバイト雇用を常勤・フルタイムから短期・時短とする傾向が強くなっています。
また求職者においては、自粛期間中に飲食店の多くが休業となったこともあり、多くの人材が短時間や日払いの仕事に移るケースが増えました。同時に副業を容認する企業も増加したことで、これまで学生・主婦層がメインだったところに副業を行う正社員が急激に増えたという結果となっています。
○「副業」を希望する20代が9割に迫る。「コロナ禍でボーナスが支給されず、収入を増やしたい」「終身雇用が当たり前でなくなりつつあるので、収入を得る手段を複数持ちたい」の声/20代アンケート
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000832.000013485.html
「Re就活」を運営する株式会社学情が、サービスのコアターゲットである20代へ仕事観についてのアンケートを実施。調査結果によりますと、就業する企業が副業を認めた場合に「副業したい」との答えが全体の9割近くを占めました。理由としてコロナ禍でボーナスが支給されない、終身雇用が当たり前でないから収入手段を複数持ちたい、自分のスキルやアイデアが通用するか挑戦したいとの声が多かったようです。
副業に対しては収入増だけではなく、仕事内容や相性を確かめる機会として活用したいという答えが9割以上と、かなりの20代が副業に前向きな考えを持っていることが伺えました。
○ランサーズ、『新・フリーランス実態調査 2021-2022年版』発表
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000123.000010407.html
ランサーズ株式会社が先日発表したフリーランスの実態調査によりますと、フリーランス人口は1,577人、経済市場規模は23.8兆円であることがわかりました。また、フリーランスのうち70%がプロ意識を持って仕事に取り組み、30%が何かしらのマネジメント経験を持っていることが判明。コロナ禍によって在宅勤務が拡大し、時間に余裕ができたことがフリーランスとしての働き方を考える機会となり、副業を始めるキッカケとなったと考えられます。
また、20代から40代においては動画撮影や編集、WEBデザインなどを学び直したいという意欲があり、このニーズに応えていくことがこれからのフリーランス活用の大きなヒントとなるでしょう。
○フリーランス活用企業の6割が「満足」の一方で、9割が何らかの課題を感じていることが明らかに
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000044.000031581.html
株式会社Lboseがフリーランスの活用経験がある首都圏の企業を対象に、企業のフリーランス活用実態調査を行いました。その結果によりますと、64%の企業がフリーランスの仕事に満足し、78%の企業が今後もフリーランスを活用したいと回答しました。その一方で、活用における社内手続きや依頼先の決定や決済など、92%に及ぶ企業が今後のフリーランス活用に課題を感じているとの回答も寄せられています。
企業がフリーランス活用する目的の多くが「短期的な人材不足の解消」や「専門的なノウハウ不足の解消」を挙げており、外部の専門家を適宜活用するだけではなく、人材採用の窓口などでの活用もケースも増えているようです。今後の採用難時代の到来を見据えるとマンパワーの充足だけでなく、人材採用の戦略構築や施策の運用などにもフリーランス活用も有効的な手段となるでしょう。
■まとめ
2021年暮れあたりからオミクロン株を起因とする新型コロナウィルスの感染拡大が顕著となり、陽性者数も過去最高値を記録するなど、またもや予断を許さないような空気が私たちを取り巻こうとしています。また、原油をはじめとする原材料費の高騰も相まって景気減速の見通しが出てきました。しかし、求人市場に目を向けるとおよそ2年にわたる採用自粛の反動もあってか、企業の採用意欲が下がる様子は見られません。その一方で離職する人材は縮小傾向にあり、人材の流動化が停滞することによって2022年は採用難が進むのではないかと考えられます。今回のトピックスでも触れましたが、常勤雇用にとらわれずに副業人材やフリーランスの活用など、柔軟な形で採用戦略の再構築が必要となっています。
※採用市況感レポートは、統計数値をもとに分析した内容を月一回お届けします。