COLUMN 採用お役立ちコラム

2022.03.16

採用市況感レポート2022年1月(厚生労働省調査データから)

皆さんこんにちは。株式会社天職市場アナリストチームです。
2022年1月分の一般職業紹介状況が2022年3月4日に、毎月勤労統計調査(速報)が2022年3月8日に公表されました。こちらに基づいて2022年1月分の採用市況感レポートをお届けします。

■有効求人倍率、新規求人数及び新規求職申込件数の動き(2022年3月4日データ)

有効求人倍率(季節調整値)

(厚生労働省 一般職業紹介状況(職業安定業務統計)より)

2022年1月の有効求人倍率は1.20と、前月から0.04ポイント増という結果となりました。7期ぶりの大幅アップとなり、緊急事態宣言の完全解除を受けて、企業の人材採用や求職者の活動が活発になったようにも見受けられます。しかし、この後オミクロン株の感染拡大を受けてまだまだ楽観視できない要素も見受けられますので、詳細については後ほど解説いたします。

新規有効求人数推移(季節調整値)

(厚生労働省 一般職業紹介状況(職業安定業務統計)より)

企業が新たな人材を求めて採用をかける新規求人数推移(季節調整値)は、対先月比0.01%減(−12,789件)という結果となりました。4期ぶりの減少となりましたが、これは年末需要が落ち着いたという見方がある一方、このタイミングで感染拡大が顕著になってきたオミクロン株により、飲食サービスを中心に採用活動が鈍化したとも考えられます。なお、対前年同月期と比較すると14.6%の増加となっております。産業別の傾向を見ると、飲食サービス業が38.8%、製造業が38.5%、情報通信業が24.7%、サービス業(他に分類されないもの)が18.7%の増加となっています。

新規求職申込件数推移(季節調整値)

(厚生労働省 一般職業紹介状況(職業安定業務統計)より)

ハローワークへ新しい仕事を求めて求職登録した人数を示す、新規求職申込件数推移(季節調整値)を見ると対前月比2.4ポイント増加(+18,802件)。マイナスだった前月からの大幅増という結果になりました。パート求職者はほぼ横ばいなのに対し、正規雇用を含むそれ以外での求職者が急増したことが大きな要因となっています。これは12月のボーナス支給後に転職活動を行う年末年始に見られる傾向が数字にも表れたとも考えられ、特に緊急事態宣言が全面解除されから初めての年末年始ということもあり、一時的ではありますが例年以上に数字が上がったとも解釈できるでしょう。

新規の求職者数は大幅に増加しているのに対し、企業の新規求人件数は減少という結果となりました。年末年始の例年通りの動きと比べても、新規求人は一時的に目減りしているように見えます。この要因となっているのが2021年末から世界中での感染拡大が報告されている、オミクロン株の国内感染が急速に広がっていったことが挙げられます。ここだけを見ると採用市場は再び買い手優位となっているように思われますが、未消化の求人案件がいまだ数多く残されているので、市場全体では売り手優位の状況に変わりはありません。その状況下で有効求人倍率が急増しているので、採用難の傾向にあることが明らかになったと捉えるべきでしょう。

■毎月勤労統計調査速報2021年12月(2022年3月8日データ)

常用雇用及び労働異動率

(厚生労働省 毎月勤労統計調査より)

毎月勤労統計速報の概況によりますと現金給与総額は274,172円で、前月から0.9%の増加という結果となりました。そのうち一般労働者が356,357円(1.2%増)、パートタイム労働者が95,945円(1.0%増)という結果に。所定内給与については一般労働者が313,797円(0.5%増)で、パートタイム労働者の時間当たり給与は1,243円(0.6%増)となっています。
ここ暫くはだいぶ落ち着いてきたかのように見受けられましたが、ここにきて再び上昇傾向に入ったかのような動きを見せています。これは慢性的な人材不足が様々な業界に波及していることで、人材確保に向けて賃金を上げる傾向にあると考えられます。

労働異動においては前月に引き続き、「飲食サービス業等」「教育、学習支援業」「医療、福祉」が大幅な増加となっております。逆に「生活関連サービス等」と「複合サービス事業」で総数が減少となっており、非常に厳しい状況に置かれていることが伺えます。

■トピックス

2022年1月の採用市況感の中で、大きなキーワードとして挙げられたのが「人材不足」です。社会問題として長く日本経済に影響を与えてきたこの人材不足について、多くのメディアがニュースとして取り上げる機会も増えています。そこで今回は、それぞれの記事を紹介することで、現状の把握と対策を紹介していきたいと思います。

正社員が不足している企業は48%、人手不足の業種トップ10は?

https://news.mynavi.jp/article/20220225-2279653/

帝国データバンクは2022年2月24日、「人材不足に対する企業の動向調査」に関する結果を公表。これによりますと、47.8%の企業で正社員が不足しているという結果に。対前年比で見ると11.9ポイントも上昇しており、新型コロナウィルスが雇用情勢に与えたインパクトの大きさを窺い知ることができます。業種で見ると、情報サービスや飲食業、建設業にその傾向が顕著に見られます。

過半数の企業が賃金改善を見込む—帝国データ調査 : 人手不足、労働力の定着・確保が課題に

https://www.nippon.com/ja/japan-data/h01254/

帝国データバンクが毎年1月に行っている、全国の企業を対象とした「賃金動向調査」の結果を公表。2022年度に正社員の賃金改善の実施見込みがあると回答した企業は、全体の54.6%という結果となりました。特に具体的な内容で顕著だったのがベースアップの46.6%で、2006年の調査開始より過去最高となりました。この背景には「人手不足による労働力の定着・確保」のと理由が76.6%ともっとも高く、新卒採用における条件アップが現従業員の賃金引き上げにつながったという回答も見られました。

外国人の入国緩和、人手不足は解消に向かうか 来日待つ10万人超

https://www.asahi.com/articles/ASQ37111VQ2WUHBI02T.html

11月末に政府が新型コロナウィルスの水際対策の強化を行い「ゼロ入国」状態となっていましたが、感染拡大のある程度の落ち着きと、産業界などからの要望を受けて制限の緩和を行いました。これで期待されるのが外国人の新規入国が再開されることにより、外国人労働者の雇用が促進され人材不足の解消につながることです。果たしてどの程度の効果が出るか、東京都立大学の丹野清人教授が解説しています。丹野教授によると入国制限は緩和されたもののすぐに効果が表れることはなく、入国待機者が解消されるまで半年以上かかるという試算が行われています。ひとまず農林水産業や建設業界では、緩和の方向で動いている傾向にある模様です。

アフターコロナで深刻化するサービス業の人手不足 今から準備しておく対策とは?

https://diamond.jp/articles/-/296006

緊急事態宣言が解除されてからの飲食サービス業は、求人を出しても思うような採用が行われない企業や店舗が続出。人手不足の深刻化による新規客の予約を受けられなかったり、営業時間の短縮を余儀なくされるところも出てきているという状況です。オミクロン株による第6波が収束し、本格的なアフターコロナ時代の到来が見込まれている中、ほぼ確実に深刻な人手不足に陥る見通しのサービス産業が人材確保に向けて、どのような対策が必要かを紹介。「業務内容の見直しや外注化」「雇用条件の見直し」「業務全体のDX化による自動化」「採用における新たな魅力創出」「雇用の細分化」などを提唱しています。

■まとめ

2022年1月に日本国内でもオミクロン株の感染者数増加を受け、都市部をはじめとするまん延防止等重点措置が施行されたことにより、再び飲食サービス業などでの採用活動が減速するのではないかと報じられています。しかし様々な調査結果を見ると、実際は深刻な人手不足によって人材確保に動いている傾向が感じられます。また同時に、社会全体の「ウィズコロナ」で経済をまわしていく傾向にシフトしている状況を鑑みると、あらゆる業界での採用活動はこれからも積極的に行われるとも考えられます。

2022年には本格的なアフターコロナ時代が到来するとも言われているだけに、これまで採用に苦労されているところはますます厳しい状況に置かれることでしょう。採用活動においては条件面だけではなく、現在の就労環境の改善などを含めた対策が必要となるはずです。悩む前に専門家に相談するなど、早めの対策を講じていきましょう。

※採用市況感レポートは、統計数値をもとに分析した内容を月一回お届けします。