COLUMN 採用お役立ちコラム

2022.09.15

採用市況感レポート2022年7月(厚生労働省調査データから)

皆さんこんにちは。株式会社天職市場アナリストチームです。
2022年7月分の一般職業紹介状況が2022年8月30日に、毎月勤労統計調査(速報)が2022年9月6日に公表されました。こちらに基づいて2022年7月分の採用市況感レポートをお届けします。

有効求人倍率、新規求人数及び新規求職申込件数の動き(2022年8月30日データ)

有効求人倍率(季節調整値)

(厚生労働省 一般職業紹介状況(職業安定業務統計)より)

2022年7月の有効求人倍率は1.29と、前月から0.02ポイント増という結果となりました。これで2021年11月から数えて、8ヶ月連続での増加となります。後ほど詳細については解説いたしますが、このペースでの増加傾向が続きますと、年内には倍率1.35以上となる可能性も出てきました。

新規有効求人数推移(季節調整値)

(厚生労働省 一般職業紹介状況(職業安定業務統計)より)

企業が新たな人材を求めて採用活動を行う新規求人数推移(季節調整値)は、対先月比1.29倍(+26,943件)となり、増加率は前月より0.02ポイント減少するもコロナ以降最高値という結果となりました。全体的に数値が上向きとなり、企業の人手不足感がグラフの上でも見受けられます。ちなみに前年同月と比較すると12.8%増という結果となり、全国的なオミクロン株の陽性者数急増は社会的なインパクトを与えても、もはや企業の採用活動を鈍らせるほどの影響はないと見受けられます。
産業別の傾向を見ると、宿泊業と飲食サービス業が47.7%増と最も数値が高く、次いで生活関連サービス業(他に分類されないもの)が16.7%増、運輸業、郵便業が14.7%増、製造業が14.5%増という結果となっています。夏のレジャーシーズンを控えた時期でもあり、コロナ禍で多大な損失を出した宿泊業、そして飲食サービス業に関しては、行動制限のない状況下で業績を一気に取り返そうという姿勢が強く反映されたと言えるでしょう。

新規求職申込件数推移(季節調整値)

(厚生労働省 一般職業紹介状況(職業安定業務統計)より)

ハローワークへ新しい仕事を求めて求職登録した人数を示す、新規求職申込件数推移(季節調整値)を見ると、前月よりも13,833件の減少(1.2%減)という結果となりました。これで全体数としては3ヶ月連続の減少となり、特に7月においてはすべての指標でマイナスとなっています。

新規求人数が増加傾向にあるのに対し、新規求職者数が大きく数値を減少しての結果が、今回の有効求人倍率1.29倍の内訳となりました。この反比例とも言える状況は、企業の人手不足がいかに深刻な状況を迎えつつあるかを知ることができます。年内に倍率1.35倍に到達すると予測される中、2023年にはコロナ禍前の最高値である1.64倍(2018年9月期)にまで上昇する可能性も出てきました。ますます売り手市場となりそうな市況、採用活動を行うにあたっては、早急な戦略の構築と打ち手を展開していく必要があるでしょう。

毎月勤労統計調査速報2022年7月(2022年9月6日データ)

常用雇用及び労働異動率

(厚生労働省 毎月勤労統計調査より)

毎月勤労統計速報の概況によりますと現金給与総額は377,809円で、前年同月より1.8%の増加となりました。そのうち一般労働者が500,828円(1.7%増)、パートタイム労働者が106,167円(3.0%増)。パートタイム労働者比率は、31.29%(0.06ポイント増)という結果となっています。所定内給与については一般労働者が318,718円(1.1%増)で、パートタイム労働者の時間当たり給与は1,241円(1.9%増)となっています。
共通事業所による現金給与総額は2.5%増で、そのうち一般労働者が3.0%増、パートタイム労働者が1.5%増加。所定外労働時間は10.1時間と前月より2.9%も拡大し、引き続き給与額も残業時間も増加傾向にあります。
給与総額ですが、前年と比べて1.8%増と現在も増加傾向が続いています。しかし、消費者物価指数の上昇率はそれをさらに上回り、2.6%上昇(https://www.stat.go.jp/data/cpi/sokuhou/tsuki/index-z.html)という結果が出ています。このアンバランスが解消しない限り、せっかくの給与所得アップの恩恵を得ることができず、結果的に報酬に関する条件の良し悪しが定着率に大きな影響を与えそうです。

労働異動においては前月同様に飲食サービス業が8.9%と大きな伸びを見せており、不動産業・物品賃貸業の3.1%、医療・福祉の2.6%が続きます。なお、電気ガス業(1.88ポイント)、情報通信業(1.23ポイント)の離職率が大きく拡大しているのが見受けられます。

■トピックス

令和3年の雇用動向の調査結果が発表になりました。改めて昨年1年間、どのような状況にあったのかを振り返ってみます。

令和3年雇用動向調査結果の概要

https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/koyou/doukou/22-2/index.html

入職率・離職率の推移

2007年からの入職率と離職率をグラフにして表すと、新型コロナウィルスの感染拡大がはじまった令和2年(2020年)で入職・離職どちらの数字も落ち込んでいることがわかります。その翌年である令和3年(2021年)では離職率が落ち込んでいるものの、入職率がほんのわずかな数値ですが持ち直す傾向にあることが見られます。長い自粛期間に一つの目処がつき、ワクチン接種が進んだことによって重症化リスクが軽減。withコロナ政策の影響もあり、ある程度の見通しがついたことも要因として挙げられます。

産業別入職超過率(令和3年(2021))

産業別では生活関連サービス業、娯楽業が大きく入職超過となり、次いで教育、学習支援業や情報通信業などでの超過が目立ちました。逆に金融業、保険業で離職が大きく上回る結果となりました。また、宿泊業、飲食サービス業が二番目に離職超過となったのは、いかにコロナ禍での営業自粛が大きな損失となったのかが伺えます。

新型コロナ水際対策 9月7日から緩和

https://www3.nhk.or.jp/news/special/coronavirus/restrictions/detail/detail_85.html

長い間、新型コロナウィルスの感染予防対策として続けられていた外国からの水際対策ですが、経済活動との両立をはかるため9月7日から緩和されました。これにより暫く凍結状態にあったインバウンド観光が再始動されることとなり、宿泊業や飲食サービス業以外の産業分野においても、大きな恩恵を受けることが期待されています。本格的に観光ニーズが回復すれば、より多くの人材を求める企業が増えていくことは間違いないでしょう。
しかし、コロナ禍前までに観光宿泊業から異業種へ転職した人材が、果たしてどの程度戻ってくるかは現時点ではまったくわかりません。現在も人手不足感が強い分野なだけに、今後さらに採用難が進むことでより厳しい状況に置かれる可能性も十分考えられます。

■まとめ

いまだに陽性確認者数の数は高い水準にありますが、全数把握の見直しが検討されるなど、新型コロナウィルスは国内の景気動向への影響力を失いはじめています。しかし、急速に進む円安など、国内の景況感に対する新たなリスクは依然猛威を奮っており、解決に向けての糸口は現在も見つかっていない状況にあります。
景気動向がそのまま採用市況に大きなインパクトを与えるのは、かつてのオイルショックやバブル崩壊、リーマンショックなどでも実証済みです。これから先のことを見通すことをせず、雇用対策に何の手立ても講じないようでは、より条件のいい企業への人材流出を防ぐことは難しくなります。新たな人材確保と同時に、いかに離職を防いでいくかがこれからの大きな課題となるでしょう。どうしたらいいか迷う前に、専門家である天職市場へ一度ご相談ください。一緒にこれからのことを考え、対策を講じていくプロが対応いたします。

※採用市況感レポートは、統計数値をもとに分析した内容を月一回お届けします。