COLUMN 採用お役立ちコラム

2022.10.27

採用市況感レポート2022年8月(厚生労働省調査データから)

皆さんこんにちは。株式会社天職市場アナリストチームです。
2022年8月分の一般職業紹介状況が2022年9月30日に、毎月勤労統計調査(速報)が2022年10月7日に公表されました。こちらに基づいて2022年8月分の採用市況感レポートをお届けします。

■有効求人倍率、新規求人数及び新規求職申込件数の動き(2022年9月30日データ)

有効求人倍率(季節調整値)

(厚生労働省 一般職業紹介状況(職業安定業務統計)より)

2022年8月の有効求人倍率は1.32と、前月から0.03ポイント増という結果となりました。これで2021年11月から数えて、9ヶ月連続での増加という状況となっています。特にここ3ヶ月の傾向を見ると、増加スピードが加速していることも見受けられます。果たしてこの状況が何を意味しているのか、後ほど解説いたします。

新規有効求人数推移(季節調整値)

(厚生労働省 一般職業紹介状況(職業安定業務統計)より)

企業が新たな人材を求めて採用活動を行う新規求人数推移(季節調整値)は、2.32倍(-29,350件)となり、前月より0.08ポイントの減少という結果となりました。件数自体は先月よりも全体的に減少していますが、8月はもともと人が動きにくい時期である上、一時的に新型コロナウィルスの感染拡大を受け、企業側の慎重な姿勢が表れた結果だと言えるでしょう。ちなみに正社員の有効求人倍率(季節調整値)は1.02倍となり、先月より0.01ポイント上回っています。
産業別の傾向を見ると、宿泊業と飲食サービス業が51.1%増と相変わらず高い数値を示しており、次いで生活関連サービス業(他に分類されないもの)、娯楽業が28.9%増、卸売業、小売業が18.7%増、製造業が17.0%増という結果となっています。

新規求職申込件数推移(季節調整値)

(厚生労働省 一般職業紹介状況(職業安定業務統計)より)

ハローワークへ新しい仕事を求めて求職登録した人数を示す、新規求職申込件数推移(季節調整値)を見ると前月よりも117件の微増となり、ほぼ横ばいという結果となりました。新規求職者においても8月は例年、新規求人同様に動きが鈍い時期でもあります。極めて小さな増加ですが、今春からの減少傾向に歯止めがかかった見方もあります。しかし、9月以降に再び減少となる可能性もありますので、しばらくは推移に注意が必要でしょう。

有効求人倍率(季節調整値)

こちらはコロナ禍以前からの有効求人倍率の推移を示すグラフですが、2019年11月からの減少傾向は一般的に「オリンピック前は景気が落ち込む」と言われており、その影響を受けての結果が表れたと考えられます。そこに2020年初旬に発生したコロナ禍によって採用市場がさらに冷え込み、2020年8月には最低値である1.03倍を記録しています。それを境に微増微減を繰り返しながら現在にいたりますが、現時点でようやくコロナ禍初期である2020年3月期の状態まで戻っていることがわかります。

今月は新規求人数が減少し、新規求職者数が横ばいとなっていますが、有効求人倍率が0.03ポイントも増加しています。これは今までの求人件数が消化できずに積み上がっていることを示しており、倍率も急速に伸びていることを考えると、今後もますます売り手市場の傾向が進んでいくでしょう。このようにグラフで見ると、2018年9月期に記録した最高値1.64倍も、この調子でいけば数ヶ月で戻ることも容易に考えられます。採用活動に行うにあたっては戦略の見直しをはかったり、新たな打ち手を講じたりと、先を見越した行動が必要となってくるでしょう。

■毎月勤労統計調査速報2022年8月(2022年10月7日データ)

常用雇用及び労働異動率

(厚生労働省 毎月勤労統計調査より)

毎月勤労統計速報の概況によりますと現金給与総額は279,388円で、前年同月より1.7%の増加となりました。そのうち一般労働者が361,969円(1.6%増)、パートタイム労働者が100,169円(3.9%増)。パートタイム労働者比率は、31.58%(0.25ポイント増)という結果となっています。所定内給与については一般労働者が317,959円(1.6%増)で、パートタイム労働者の時間当たり給与は1,248円(1.3%増)となっています。
共通事業所による現金給与総額は1.2%増で、そのうち一般労働者が1.4%増、パートタイム労働者が2.1%増加。所定外労働時間は9.5時間と前月より4.2%も拡大し、引き続き給与額も残業時間も増加傾向が続いています。
しかし、消費者物価指数の上昇率(※)は2.8%となり、現金給与総額の伸びが追いつかないどころかさらなる乖離が見られます。今後も離職を防ぐ上でも、待遇の見直しなども考慮する必要があるでしょう。

https://www.stat.go.jp/data/cpi/sokuhou/tsuki/index-z.html

労働異動においてはこれまで同様、飲食サービス業が8.9%と大きな伸びを見せています。不動産業・物品賃貸業の3.1%、医療・福祉の2.8%、建設業の2.1%が続きます。

■トピックス

今回は採用市場における、2つの課題についての記事を紹介します。

まずは社会問題化する消費者物価の上昇に伴う、一般家庭の支出調査について。消費支出の増加は収入面に関する不安リスクとなりやすいので、今後の離職対策の一つとしてご活用いただければと思います。

家計調査(二人以上の世帯)2022年(令和4年)8月分 (2022年10月7日公表)

https://www.stat.go.jp/data/kakei/sokuhou/tsuki/index.html

消費支出の推移
消費支出の内訳(2022年8月 二人以上の世帯)

単身世帯を除く世帯あたりの消費支出は、2021年8月と比較して実質5.1%の増加となっています。内訳を見ると、食料と交通・通信費などの生活に直結する支出が増えていることがわかります。家族の人数が多ければ当然食費は嵩みますし、そこにインフレの影響が出ればダイレクトに家計にダメージを与えることになります。コロナ禍でリモートワークの機会が増えたとはいえ、通勤通学に公共交通機関を利用するケースはまだまだ多い上、リモートワークによる通信費の支出増加は家計における新たな問題点となっています。今後は手当支給など、状況に応じた待遇・福利厚生の見直しも必要になってくるでしょう。

そして、もう一つの課題である人材不足に関するデータとして、ハローワークにおける中学高校の新卒状況に関するデータを紹介します。

令和4年度「高校・中学新卒者のハローワーク求人に係る求人・求職状況」取りまとめ(令和4年7月末現在)

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/jakunen/2023CK_job_opening_to_applicants_ratio_202207.html

令和4年度 高校・中学新卒者のハローワークに係る求人・求職状況

中途採用においては学歴不問の求人を行う企業も増えているものの、新卒採用に関しては中学新卒者が求人数・求職者数が両方とも減少傾向にあり、有効求人倍率も0.89%という状況にあります。対して高校新卒者においては求人数が増加傾向にあるものの、求職者数は8.0%減で有効求人倍率も3.01倍とかなりの採用難であることが伺えます。中学高校の新卒採用では求職者保護の観点からこれまで厳しい制限が行われてきましたが、2022年9月の高校新卒採用の一部解禁に伴い、新たな取り組みをはじめる民間企業も出てきています。

閉ざされた市場「高卒就活サービス」に挑む民間企業。“選択肢なき就活”は変わるか?

https://www.businessinsider.jp/post-259291

これまで大手求人サービス会社が行ってきた短大・専門・大学生の新卒求人サービスと同様に、高校新卒向けの求人サービスがスタート。2022年8月時点で掲載社数1870社であるものの、上記に示すように求人数は増加傾向にあるので、今後はさらなるサービスの拡充が見込まれています。こうした人材サービス会社や転職エージェントのサービスが拡充し、より身近なものになってくると、ハローワーク経由での採用はさらに厳しくなることも考えられます。採用活動においても、新たな施策の検討も必要になるでしょう。

■まとめ

コロナ禍の影響で一時は買い手優位となった採用市場ですが、感染リスクの軽減化に伴って再び売り手市場へと移行しています。さらに三十数年ぶりとも言われる急速な円安傾向が国内の景況感に暗い影を落とし始めており、経営戦略に直結する人材採用においても離職・転職の増加などの影響が出てくることが想像できます。
将来を見据えて新しい人材の採用はもちろんのこと、離職防止などの現状の体制維持も想定した経営戦略もこれからは必要となってくるでしょう。山積する課題を目の前にどうしたらいいか迷う前に、専門家である天職市場へ一度ご相談ください。一緒にこれからのことを考え、対策を講じていくプロが対応いたします。

※採用市況感レポートは、統計数値をもとに分析した内容を月一回お届けします。