COLUMN 採用お役立ちコラム

2023.03.06

採用市況感レポート2022年12月(厚生労働省調査データから)

皆さんこんにちは。株式会社天職市場アナリストチームです。
2022年12月分の一般職業紹介状況が2023年1月31日に、毎月勤労統計調査(速報)が2023年2月7日に公表されました。こちらに基づいて2022年12月分の採用市況感レポートをお届けします。

■有効求人倍率、新規求人数及び新規求職申込件数の動き(2023年1月31日データ)

有効求人倍率(季節調整値)

(厚生労働省 一般職業紹介状況(職業安定業務統計)より)

2022年12月の有効求人倍率は1.35と、2022年10月から3ヶ月連続で増減なしという結果となりました。市場動向としては特に変化がないようにも思えますが、昨年同月期と比較すると0.19ポイントの大幅増となっており、企業の求人数が求職者数を上回る「売り手市場」が加速しているようにも考えられます。

有効求人倍率(季節調整値)

(厚生労働省 一般職業紹介状況(職業安定業務統計)より)

2018年7月からの有効求人倍率の動きをグラフで振り返りますと、ピーク時(2018年9月)の1.64倍からおよそ1年近く、倍率がほぼ横ばいであることがわかります。2019年4月から緩やかに数値が下降し、新型コロナウィルスの感染拡大がはじまったとされる2020年2月の時点で現在の1.35倍とほぼ同水準となっています。その半年後である2020年9月には最低値である1.03倍を記録していますが、そこから1.35までの数値に戻るまでおよそ2年の月日がかかっています。
一説には2023年の比較的早い時期に、有効求人倍率が1.64倍まで近づくのではないかという見方もあります。しかし、現在も売り手市場には間違いないのですが、3ヶ月連続での横ばいという結果の裏には何があるのでしょうか。この後に触れる新規求人数および求職者数の推移を見ながら、求人市場の今について解説してまいります。

新規求人数推移(季節調整値)

(厚生労働省 一般職業紹介状況(職業安定業務統計)より)

企業が新たな人材を求めて採用活動を行う新規求人数推移(季節調整値)は、パート求人を含む全体を見ると13,380件の減少(-0.4%)となりました。新規有効求人倍率も2.39倍と、前月を0.03ポイント下回る結果となりました。例年ですと12月はボーナス支給後の離職者を見込んで求人件数が増える傾向にあるのですが、2022年に関しては全体的に減少しています。なお、コロナ禍の影響下にあった前年同月と比べると4.8%の増加となっていますので、これは原価高騰などに伴う景況感の不安から、企業の採用活動が鈍化しているのではないかとも考えられます。
産業別の傾向を見ると、生活関連サービス業、娯楽業が18.5%増と最も高く、次いでサービス業(他に分類されないもの)の7.9%増、宿泊業、飲食サービス業の6.9%増と続きます。逆に建設業が6.2%減、製造業は0.1%減という結果となっています。

新規求職申込件数推移(季節調整値)

(厚生労働省 一般職業紹介状況(職業安定業務統計)より)

ハローワークへ新しい仕事を求めて求職登録した人数を示す、新規求職申込件数推移(季節調整値)を見ると、12月は前月よりも265件の微増となりました。12月は例年ボーナス受給後に離職する従業員が増える傾向にありますが、全体的に横ばいという結果は景況感の不透明さから離職のリスクを取らず、現在の就業環境を維持しようとする人が増えているのではないかとも考えられます。

2022年12月は新規求人件数が減少となり、新規求職者はほぼ横ばいという結果になりました。有効求人倍率は3ヶ月連続で1.35倍と変化がありませんが、求人件数と求職者との割合が縮まらないことから、今後も売り手市場の状況が継続していくでしょう。一時期に比べると宿泊業、飲食サービス業の求人は落ち着きを見せたものの、コロナに関するさらなる規制緩和と比例する形でインバウンド市場が活気づくことが予測され、新たな人材募集を行う企業も増える可能性は十分考えられます。ますます人手不足感は加速していくことが考えられるので、2023年はより景況感に注意を払いながら、採用活動を行っていく一年になるでしょう。

■毎月勤労統計調査速報2022年12月(2023年2月7日データ)

常用雇用及び労働異動率

(厚生労働省 毎月勤労統計調査より)

毎月勤労統計速報の概況によりますと現金給与総額は572,008円で、前年同月より4.8%の大幅な増加となりました。そのうち一般労働者が786,024円(5.0%増)、パートタイム労働者が114,941円(2.6%増)。パートタイム労働者比率は、31.98%(0.04ポイント増)という結果となっています。所定内給与については一般労働者が321,5405円(1.9%増)で、パートタイム労働者の時間当たり給与は1,256円(3.0%増)となっています。
共通事業所による現金給与総額は3.3%増で、そのうち一般労働者が3.9%増、パートタイム労働者が0.6%に増加。所定外労働時間は10.5時間と前月より1.7%も拡大しています。
一部の大手企業が賃金アップを表明するなど、ここに来て企業が本格的に可処分所得の増加に力を入れ始めています。しかし、消費者物価指数の上昇率は前年同月比の上昇率は4.0%(※)で、現金給与総額の3.3%との乖離が広がったままとなっています。今後はいかに賃金アップを行う企業が増えていくのか、その動向にも注目していきたいところです。

<参考資料(※)>

消費者物価指数(前年同月比、生鮮食品を除く)

消費者物価指数 全国 2022年(令和4年)12月分

https://www.stat.go.jp/data/cpi/sokuhou/tsuki/index-z.html

前年同月比4.0%上昇 前月3.8%からさらに増加

消費者物価、22年12月4.0%上昇 41年ぶり上げ幅

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA19BA70Z10C23A1000000/


労働異動においてはこれまで同様、飲食サービス業が8.3%増と大きな伸びを見せており、次いで不動産・物品賃貸業が2.5%増、医療・福祉が2.2%増と続きます。逆に複合サービス事業が8.8%減という結果となっています。

■トピックス

今回は有効求人倍率の緩やかな上昇に伴い、人手不足感の加速における弊害についてフォーカスを当ててみました。業界によっては深刻な人手不足が解消せず、倒産に追い込まれたケースも増加している模様です。

「人手不足倒産」、3年ぶり増加 賃上げ難の企業で人材流出か(ITmediaビジネスONLINE)

https://news.yahoo.co.jp/articles/9da59283c28e9b99ebd9ecbf0f6076cab4560e6f

2022年の「従業員退職型」では建設業で割合が高い

帝国データバンクの調査によると、建設業などを中心に従業員や経営幹部などの退職・離職による「人手不足倒産」が2019年以来3年ぶりに増加に転じたとのこと。主に賃上げできないことを退職理由に挙げるケースが多く、今後は賃上げできない中小企業から高給を求めて人材の流出が進み、経営が行き詰まる中小企業が増えるのではないかとの見通しも立てています。

労働力調査(詳細集計) 2022年(令和4年)(総務省統計局 2023年2月14日)

https://www.stat.go.jp/data/roudou/sokuhou/nen/dt/pdf/ndtindex.pdf

就業者数の推移(男女計)

2023年2月14日に、総務省による労働力調査の年間統計が発表されました。2022年の就業者数は長引くコロナ禍の影響で男性が減少傾向にあるのに対し、女性は2021年より回復傾向にあることが見えます。

正規、非正規の職員・従業員数の推移

正規職員および従業員数は2014年より増加傾向にあるのに対し、非正規職員や従業員はコロナ禍を機に減少し、2022年は多少の回復を見せているもののコロナ禍以前の水準に戻っていないことがわかります。可能性としては、非正規から正規雇用にシフトした人が増えたとも考えられます。

働き方に対する意識

働き方に対する意識については、非正規社員は「都合の良い時間に働きたいから」が増加しているのに対し、「正規雇用の求人がないから」は年々減少している結果となりました。自分のライフスタイルに応じてフレキシブルに働きたいという意識よりも、安定を求めるという意識がより強くなっていることを表しています。

転職者数の推移

転職者数は2020年と2021年がコロナ禍の影響で大きく数値を落としていたのに対し、2022年は自粛や行動制限の緩和に伴って回復傾向に転じました。今後は先にも取り上げた賃上げ倒産やコロナ収束に伴う経済支援の終了をキッカケに、体力の乏しい企業の倒産が増加することが考えられます。そのため、失職などによる転職者数はさらに増えていくことが見込まれます。

■まとめ

2023年春には新型コロナウィルスが指定感染症2類相当から5類への移行が決定され、人の流れが本格的にコロナ禍以前に戻ることが考えられます。すでにインバウンド市場の回復を見越してV字回復をはかろうとする企業も増えており、これから求人数も増えていくのではないかとの予測も立てられています。人が活動的になれば自ずと景気も回復傾向となるはずですが、長引く世界情勢の不安定さなどを起因とする原価高騰や円安など、2022年に発生した様々なリスクが引き続き採用市場に大きな影響を与えることは間違いないはずです。
すでに一部の大手企業で新卒を含む従業員の賃上げを実施するところも増えていますが、賃上げをしにくい中小・零細企業との乖離が進むことで人材の流動化が加速し、人手不足による倒産リスクが高まることも現実問題として捉えておく必要があります。いかに人材を確保し、定着させていくべきか。まずは専門家である天職市場へ一度ご相談ください。一緒にこれからのことを考え、対策を講じていくプロが皆さんの成功を後押しいたします。

※採用市況感レポートは、統計数値をもとに分析した内容を月一回お届けします。