COLUMN 採用お役立ちコラム

2023.05.08

採用市況感レポート2023年2月(厚生労働省調査データから)

皆さんこんにちは。株式会社天職市場アナリストチームです。
2023年2月分の一般職業紹介状況が2023年3月31日に、毎月勤労統計調査(速報)が2023年4月7日に公表されました。こちらに基づいて2023年2月分の採用市況感レポートをお届けします。

■有効求人倍率、新規求人数及び新規求職申込件数の動き(2023年3月31日データ)

一般職業紹介状況 2023年2月分 3/31公表
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_32158.html

有効求人倍率(季節調整値)

(厚生労働省 一般職業紹介状況(職業安定業務統計)より)

2023年2月の有効求人倍率は1.34倍と0.01ポイント下がり、2カ月連続の下降となりました。要因は先月と同様、求職者の増加となっています。

有効求人倍率(季節調整値)

(厚生労働省 一般職業紹介状況(職業安定業務統計)より)

長期的なグラフで見ると、コロナで底を打った2020年夏を境に上昇に転じ、2022年末から横ばいに転じている状況です。

新規求人数推移(季節調整値)

(厚生労働省 一般職業紹介状況(職業安定業務統計)より)

新規求人の動きをみると、前月比で若干の減少となっています。時期的には求人が底を打つタイミングなので減少はおかしなことではありませんが、採用が逼迫している正社員の新規求人が減少に転じている点(1月 +3,996件、 2月 -4,669件)は、今後も注意が必要です。前年同月比では10.4%増となり、右肩上がりのトレンドは大きく変わっていません。
なお、グラフで示してはいませんが、有効求人件数は前月比0.8%増となっており、積み上がった求人が市場にまだ残っている状況です。

新規求職申込件数推移(季節調整値)

(厚生労働省 一般職業紹介状況(職業安定業務統計)より)

一方、新規求職者の数は3カ月連続の増加となっています。
特にフルタイム希望(≒正社員)の求職者は伸びが大きく、採用市場に正社員層の転職者が流入している様子がうかがえます。

2月の有効求人倍率低下は1月に引き続き「求職者の増加」によるものと推測できます。以前、ダウンロード資料※でも紹介しましたが、コロナ明けの経済再起動に物価高が加わり、2023年上期は求職者の増加が起きると予想されていました。統計データ上も求職者増加が顕著に見られ、人材確保のチャンスとなっています。しかし、このボーナスタイムは一時的なもので、2023年下期には再び採用難が加速してくると思われます。

※過去のダウンロード資料
インフレが転職を加速!2023年は人材獲得のチャンスに!?(ten-shoku-news vo.34)
https://1049.co.jp/download/dl_221212/
「人手不足倒産」増加で人材の獲り合いが激化(ten-shoku-news vo.38)
https://1049.co.jp/download/dl_230331/

■毎月勤労統計調査速報2023年2月(2023年4月7日データ)

https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/monthly/r05/2302p/2302p.html

常用雇用及び労働異動率

(厚生労働省 毎月勤労統計調査より)

毎月勤労統計調査の概況では、賃金上昇と所定外労働時間の増加が続いています。
共通事業所による現金給与総額は1.9%増。うち一般労働者が1.6%増、パートタイム労働者が4.1%増となっています。また所定外労働時間は2.1%増となりました。
コロナ明け経済再始動を受けて、全体的な仕事量が増加している状況です。
特に労働人口の増加が著しい「飲食サービス」「生活関連サービス」「その他サービス」は採用市場が活性化しています。
一方で、物価上昇はまだ続いています。消費者物価指数は前年同月比3.3%上昇で、前月4.3%から上昇率は低下していますが物価上昇は止まっていません。

消費者物価指数 全国 2023年(令和5年)2月分(総務省統計局)
https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&toukei=00200573&tstat=000001150147

実質賃金は-2.6%となり、前月の-4.0%よりも若干改善されましたが、賃上げが追い付いていない状況が続いています。これは就業中の人材が転職活動を始める後押しになっているため、今後しばらく求職者が採用市場に流入する状況が続くものとみられます。

■トピックス

今月は採用市場のトレンドとして2つのデータを紹介します。
一つ目は人口減少です。総務省統計局が発表した2022年10月の総人口は12年連続の減少となっており、人口減少のペースが加速しています。

総人口12年連続減少―総務省推計 : 14県で1%超の人口減、沖縄は復帰後初のマイナス(nippon.com、2023年4月13日)
https://www.nippon.com/ja/japan-data/h01650/

1990年以降の日本の総人口の増減数の推移

また、65歳以上人口の占める割合も過去最高の29.0%となり、高齢化も加速しています。いわゆる現役世代に当たる生産年齢人口は29万人以上の減少となっており、長期的に見ても増加の見込みはないため、若手人材の確保は引き続き厳しい状況が続くと考えられます。

もう一つのデータは民間会社の「定年退職した60代の男女1100人を対象に仕事とお金に関する調査」です。

定年退職後も「仕事している」66% : 人生100年時代、60代はまだ現役(nippon.com、2023年4月14日)
https://www.nippon.com/ja/japan-data/h01646/

定年退職後に働いているか?

同調査で「定年退職後に働いているか?」聞いたところ、66%が何らかの形で働いていると答えています。いわゆる定年となる年齢=65歳以上でも5割以上の人が働いており、シニア人材が労働力として社会を支えていることがわかります。
年金支給額の改定や、今後の年金支給年齢の上昇を考えると、「働くシニア」増加の傾向は今後も強まっていくと見られます。若手の確保が長期的に難しくなることから、シニア人材の活用はすべての企業で重要になってくることでしょう。シニア採用に着手されていない企業では、早めにシニア採用のスキーム構築を進めることをお勧めします。

■まとめ

2カ月連続の有効求人倍率低下を受けて、「この先求人が楽になる」と考える採用担当の方もおられるようです。新型コロナウイルスの5類移行もあり、今後さらに求職者の動きは活発していくことが予想されます。しかし、この動きは短期的なもので、採用しやすい「ボーナスタイム」は半年程度で終わってしまうでしょう。人材確保を進める企業としては、短期・長期両面のアクションが必要となります。
・短期的に有意な人材を確保する 経験者採用の強化
・その後の採用難に備えた人材確保スキームの構築 シニア採用など
・採用した人材の離職を防ぐ仕組みづくり
採用市場が大きく変化する2023年の採用施策は、今後数年の採用の成果を左右することになるでしょう。天職市場は、採用市場の変化に対応して「採用で勝てる」企業となるための施策を多面的にご提案できます。人材採用の課題は、ぜひ弊社コンサルタントにご相談ください。

※採用市況感レポートは、統計数値をもとに分析した内容を月一回お届けします。