2025.07.29
「103万円の壁はどう変わりましたか?」採用Q&Aシリーズ
人材採用を担当するときに感じるちょっとした疑問。誰かにちょっとだけ聞きたい質問に一問一答でお答えしていくのが【採用Q&A】シリーズです。
今回のご質問は「103万円の壁はどう変わりましたか?」です。
Q:103万円の壁はどう変わりましたか?
A:所得税の扶養範囲の上限は2025年から123万円に変わりました。
パートやアルバイトで働く際に意識される「年収の壁」。税金や社会保険の負担が変わるこの境界線は、働き方を調整する大きな要因となっています。近年、人手不足対策や働き方の多様化を背景に制度改正が相次いでおり、「いつからどう変わるのか」が分かりにくくなっています。
ここでは、所得税、住民税、社会保険の制度ごとに、年収の壁がいつ、どのように変わるのかを分かりやすく整理して解説します。

1.社会保険の壁:2024年10月から対象者が拡大
手取り額への影響が最も大きい社会保険の壁。扶養から外れて自身で保険料を支払うと、手取りが大きく減る「働き損」の状態が起こりやすいのが特徴です。
▶【106万円の壁】2024年10月から、より多くの人が対象に
短時間労働者が勤務先の社会保険(厚生年金・健康保険)に加入する基準の一つが「106万円の壁」です。これまでも段階的に対象が拡大されてきましたが、2024年10月1日からさらに範囲が広がります。
変更点:社会保険の適用対象となる企業規模が、「従業員100人超」から「従業員51人超」に引き下げられました
これにより、これまで対象外だった中小企業で働くパート・アルバイトの方も、以下の要件をすべて満たすと社会保険への加入が義務付けられます。
<社会保険の加入要件(2024年10月〜)>
1.勤務先の従業員数が51人以上
2.週の所定労働時間が20時間以上
3.月額の賃金が88,000円以上(年収 約106万円以上)
4.雇用期間が2ヶ月を超えて見込まれる
5.学生ではない
政府は、この変更を後押しするために、事業主が労働者の保険料負担を軽減する手当を支給した場合などに助成金を支給する「キャリアアップ助成金(社会保険適用時処遇改善コース)」を用意しています。
※2025年6月に年金制度改正法が成立し、今後10年かけてすべての企業が対象となるように拡大していくことが決まっています。
▶【130万円の壁】一時的な収入増なら扶養を継続できる特例措置
勤務先の規模に関わらず、年収が130万円以上になると配偶者の社会保険の扶養から外れ、自身で国民健康保険と国民年金に加入する必要が生じるのが「130万円の壁」です。
変更点:人手不足による残業などで一時的に収入が130万円を超えてしまった場合でも、事業主がその旨を証明すれば、連続2回まで(最大2年間)は引き続き扶養に入り続けられるという特例措置が2023年10月から始まっています。
あくまで「一時的な収入増」が対象であり、時給アップや恒常的なシフト増などで継続的に130万円を超える見込みとなった場合は対象外です。
2.税金の壁:2025年から「103万円の壁」が大きく変わる
配偶者や親の税法上の扶養に入るための基準となるのが「税金の壁」です。2025年1月1日以降の所得(2025年の年末調整や2026年の確定申告)から適用される令和7年度税制改正で、大きな変更が決まりました。
▶【103万円の壁 → 123万円の壁へ】扶養に入れる年収上限がアップ
これまで、年収103万円が所得税の扶養から外れる基準でした。これは、給与所得控除(最低55万円)と基礎控除(48万円)の合計額です。
変更点(2025年1月〜):
給与所得控除の最低額が55万円 → 65万円に引き上げ
扶養に入るための所得要件が合計所得48万円以下 → 58万円以下に引き上げ
この結果、給与収入のみの場合、扶養に入れる上限額は123万円(給与所得控除65万円 + 所得要件58万円)となります。
つまり、2025年からは年収123万円までであれば、配偶者や親の扶養に入り続けることができます。
▶自分自身の所得税は?:「160万円の壁」という考え方
扶養とは別に、自分自身に所得税がかかり始めるラインも変わります。
変更点(2025年1月〜):
基礎控除が48万円 → 58万円に引き上げ
給与所得控除の最低額が55万円 → 65万円に引き上げ
これにより、少なくとも年収123万円(58万円+65万円)までは所得税がかからなくなります。さらに、2025年・2026年の限定的な措置として、年収が低い層には基礎控除の上乗せがあり、メディアなどでは「最大160万円の壁」といった表現で解説されています。
▶【150万円・201万円の壁】配偶者特別控除の基準も変わる
配偶者の年収が103万円(2025年からは123万円)を超えても、納税者(夫など)の所得を一定額控除できる「配偶者特別控除」の基準も、今回の改正で変更されます。年収150万円までなら満額の控除が受けられ、約201万円まで段階的に控除が適用される仕組み自体は維持されますが、その判定の基礎となる所得の計算方法が変わる形となります。
▶まとめ:今後の働き方を考える上でのポイント
2025年以降、税金の扶養を気にせず働ける上限が123万円に上がるため、これまで103万円を意識して働き損をしていた方は、収入を増やせるチャンスです。ただし、その場合も106万円/130万円の社会保険の壁をどうするか、検討が必要です。
物価上昇に押される形で賃金上昇が続いているため、扶養範囲を超えて働くことを選ぶ方も増えています。社会保険に加入して保障を手厚くするのか、扶養の範囲内で働くのか、就業者の意向に合わせて管理していく必要があります。
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